「……帰りたいです」
「ふはっ」
────笑った!?
今、絶対笑ったよね!?
驚いて隣を見ると、楽しげ表情をしている。意味がわからず首を傾げると彼は口を開いた。
「瀬名さんは高望みしないんだね」
「し、ないですよ……そんなの……」
生まれてこのかた 十六年間
一般家庭で平凡の生活を送ってきたんだ。
私は有泉さんとは違う。
皆さんが納得するに相応しいお願いなんて思いつくはずがない。
「有泉さん」
「……なに?」
「お伝えし忘れていましたが、私は外部生です。つまりは生きている世界が違います。私のために何かを尽くそうとする必要は全くもってありません!」
そうだ。
私はただの一般人。
言ってしまえばホテルの噂を流す手段すらいないのだ。
ホテル側の対応についての話をする機会なんて二度と現れない。
きっとホテルの評判に傷がつくこともない。安心して欲しい。
その思いで震えそうになる声を何とか保って、勇気を振り絞って伝える。



