「お騒がせしました」
「あの……!!」
背後から私を止める声が聞こえたけどフル無視。
びしょびしょに濡れたドレスからは水が滴り、多分私がいた場所には水たまりができている。
早急に拭いてもらわないと。
会場中の視線を浴びながらホールを後にして私は、
行く当てなくて思いっきり走った。
全力ダッシュ。
本気の、ガチばしり。
パニックになった頭を誤魔化すように、私は体を動かす。
履きなれないパンプスを走ったから
かかとは痛んだけれど、そんなの気にならないほど必死だった。
走った拍子にバランスを崩したらしい髪飾りを、スルッと片手で引っこ抜く。
パラパラと舞い降りてきた乱れた髪の毛すらも気にならない焦り具合。
なんとかホテルの中庭にたどり着いて、ゼーハーゼーハーと言う息を静める。
「ハァッ、ハアッ、ハァッ……こ、こわかったー!こっちを見てくるみんなの視線が怖くて怖くて!」
あ、なんかジンジンする。
パッと視線を向けると血が出ていた。最悪。
それに寒い。今三月。
三月なんて春入りたてでまだ寒いのに薄着のドレスに水浸しなんて体温がどんどん取られる。


