こっち向いてよ、千歳くん。


「千歳くーん! 私の名前、ちゃんと覚えてるー!?」


「は?」


「いっつも、あんた呼ばわりしてるから! 私の名前、ちゃんと覚えてないのかなって思って!」


「……」


「如月 華乃! 如月 華乃です! 覚えてねー!」




選挙で宣伝する人のように私はそう言った。



そして、そのまま私は試合コートへ走っていった。





「……ふ、なにあれ」




彼は思わず笑みをもらした。


そして、笑顔を消す。



「……覚えてるって、ちゃんと」



そう言いながら、彼は視線を自身の左手へ視線を落とした。



どこか悲しそうな、消えてしまいそうな表情。


それは、あの部見学の日と同じだった。