「……千歳くん、バスケ好きなの?」
私は、千歳くんの背後から声をかけた。
すると、千歳くんはびくっと肩をはねさせて、私の方をゆっくり振り向いた。
「……なんで、ここに」
大げさなくらい目を見開く彼。
私は、顔をしかめた。
「なんでって。見てたらダメなの?」
「い、いや。そういうわけじゃない、けど」
「千歳くん、すっごくバスケ部に興味津々みたいだったから! バスケ部入るつもりなの?」
私は千歳くんにそう声をかけた。
すると、千歳くんは一瞬だけ視線を下に落としてから、答えた。
「……いや」
「え?」
「入らない」
千歳くんの言葉に驚いて、私は思わず聞き返してしまった。
「どうして? あ、他の部活入りたいとか?」
「……それも違う」
そう言って、彼は体育館の方を見ながら、呟いた。
「……俺、一生帰宅部って決めてるし」
そう言いながら。結局、視線は一度も私の方に向かなかった。

