「ねぇ、冬馬」
「なに?」
「もっと?」
「もっとだよ。ツノが立つまで混ぜて」
それから私たちはデートを重ね、恋人同士になった。
今日は付き合って一年記念のケーキ作りで、私は生クリームを一生懸命泡立てている。
「つらいー……」
「頑張れ」
くすっと笑う冬馬。
付き合い始めてしばらくして、「ふゆくん」じゃなくて名前で呼んでほしいと言われた。
それ以来、私は冬馬と呼んでいる。
「花蓮、味見」
別で作っていたクリームを差し出され、大きく口を開ける。
「んー、おいしい!」
「口元についてるよ」
「あ、ほんと?」
「動かないで」
さらりと黒髪が揺れる。
そう思った次の瞬間、口元についたクリームをぺろりと舐め取られた。
「ん、おいしい」
「もう……」
思わず頬を膨らませる。
すると今度はその頬に軽くキスが落とされた。
「こっちも」
「なっ……」
さらに唇まで重ねられる。
甘い。甘すぎる。
「こら!これじゃいつまで経っても泡立たない!」
「じゃあ、電動泡立て器使うか」
「いや、あるなら最初から出してよ!?」
「だって、一生懸命な花蓮が可愛かったから」
冬馬がふっと笑う。
初めて会った頃のクールな姿が嘘みたいだ。
笑うたびにできるえくぼが可愛くて、つい見つめてしまう。
「……なに?」
「え?」
「見惚れてた?」
「えくぼにね」
「えくぼって……」
冬馬が苦笑する。
そんなやり取りをしながら、無事にケーキは完成した。



