あたしも、メロンパンの袋を見ながらほほ笑んだ。
健くんの顔を見ることができなくて。
ほのかに温かいメロンパン。
健くんの体温が、まだメロンパンに残っていた。
「教室に戻るぞ」
ズボンのポケットに両手を突っ込んだ健くんは、あたしに背中を向けて歩き出した。
その背中を追いかけるあたし。
手におさまるメロンパンと同じように、心が温かくなった。
「あ、柏木。おかえり」
教室に戻ると、すぐにヒロくんが駆け寄ってきた。
和馬くんは、相変わらず不機嫌そうな表情で机に頬杖をついている。
「健も一緒だったんだ」
ヒロくんが、健くんに目を向けた。
「途中でばったり会った」
素っ気ない言い方。
健くん……さっきの事は、言わないつもりなんだね。
「柏木、ちゃんと購買行けたんだ」
「え?」
「それ、正解だよ。ウチの購買で一番うまいパンなんだから」
そう言ったヒロくんの人差し指が、あたしの手の中のメロンパンに向いた。
「ああ、これは――」
言いながら、健くんに目を向ける。
すると、ヒロくんの後ろで、健くんがスッと鼻に人差し指を立てた。
「俺もさっき言った。それ買って正解だって」
ほほ笑んだ健くんの目が、『さっきの事は、黙っとけ』
何だか、そう言っているような気がした。



