「龍兄、もう自分の教室行けよ。ゆずにも会ったし、もう満足だろ?」
乱暴に机に鞄を叩きつけながら、和馬くんが片方の眉を上げた。
「なんだ、朝から不機嫌なツラして」
「別に? 気分上々だよ」
椅子に座って、頬づえをついている。
「コイツが不機嫌なのは、ただ単に、取られたくないだけじゃね?」
あっ? と、和馬くんが健くんを睨んだ。
「常に隣に置いておきたいタイプだろ? おまえ」
健くんはそう言って、あたしの方に目を向けた。
登校途中に見たあの目。
あたしの心臓を射抜く、卑怯なほほ笑み。
お、恐ろしい……
「と、とにかく。もう帰れ、龍兄!!!!」
「口が悪いな和馬。一応、俺先輩だぞ」
「こんなときだけ先輩面すんじゃねーよ」
和馬くんの言葉にムッと眉間にしわを寄せた龍兄。
だけど、すぐにフっとほほ笑んだ。
「はいはい。帰りますよ。あ、そうだゆず」
去り際に名前を呼ばれ、うん? と首を傾げた。
「和馬に何かされたすぐに俺に言えよ」
「………」
「俺がシメてやる」
にっこり笑いながらサラリと言った龍兄。
こ、怖いよ、その笑顔。
あたしは頬を痙攣させながら笑顔を作った。



