不意に、下げる頭に落ちてきた声。
パッと頭を上げる。
「お願いしますだけでよくね?」
か、和馬くん!?
窓際の一番後ろの席で、和馬くんが意地悪な笑みを浮かべていた。
目と口が、同時にパクパクと動く。
「和馬っ。おまえはどうしてそういう言い方しかできないんだよ。柏木が一生懸命挨拶してんのに」
ひ、ヒロくんっ!!?
真ん中の一番後ろの席には、和馬くんを叱り付けるヒロくんが。
「ガキの頃から、何にしてもなげぇんだよ、あいつ」
「和馬っ!!!」
「健もそう思うよなぁ?」
「………」
た、健くんまでっ!!!!
廊下側の一番後ろの席に目を向けると、雑誌に視線を落とす健くんが座っていた。
「柏木、D組だったんだな」
驚きのあまり声が出せず、コクンと頷いた。
「やった。また同じクラス」
ヒロくんの笑顔で、さっきまでの緊張感はどこかへ吹っ飛んだ。
ヒロくんを見てると、やっぱり自然と口角が上がる。
子供の頃も、あたしの心のオアシスはヒロくんだった。
ざわつく教室。
あちこちから女子の視線が刺ささる。
(何? あの子)
(何でヒロくん達と親しげなの?)
こそこそ交わされる会話。
ちょっと気になったけど、あえて聞こえない振りをした。
きっと、今はそうした方がいい。



