「お父さんの仕事の都合で、またこっちに引っ越して来たんだって」
あたしの代わりに説明してくれたヒロくん。
健くんは、ふーん。 と、素っ気ない返事を返した。
健くんの無表情な視線に後ずさりしてしまいそうだったけど、ヒロくんがニッコリほほ笑んでくれるから、あたしもヒロくんの真似をしてほほ笑んでみせた。
それなのに……。
「………」
そっぽを向いた健くん。
しかも、ひとり先に歩いて行っちゃうし……。
あたしの笑顔、ダメだった?
ヒロくんの真似をしようと思ったのが、間違いだったか……
「ったく。どうしてこう、みんな素直じゃないんだろ」
ヒロくんが頭をかきながら頭を傾げる。
「柏木。 今の気にすることないからな。あいつ、ああいうヤツだから」
そういえば、子供の頃からそうだったっけ。
あんまり表情を表に出さないというか、大人しいというか。
「あいつも、柏木が帰ってきて喜んでるはずだから」
ヒロくんのフォローのほほ笑みが向けられる。
「う、うん」
あたしもヒロくんにほほ笑み返したけど、それがなぐさめだの笑顔だってわかるからなんか切ない。
「おまえら、行くぞっ!!! 時間ヤバイって」
「うわっ!!! マジだっ。 柏木、ちょっと走れる?」
携帯で時間を確認したヒロくんが、慌てて言った。
「うん。 大丈夫」
「学校まで、走るぞ」
「う、うん」
ヒロくんと和馬くんの背中を追って駆け出した。
子供の頃と同じ光景。
いつも、こうやって町中を走ってたっけ。
あたしの足が遅くて、いつも、少し先からみんなが手招きしてた。
「おーい、柏木っ。あともう少し、がんばれっ!!!」
って、今みたいに――。
そういえば、もう一人、一緒に遊んでた子がいたような気がするんだけど……。
どんな子だったっけ。



