「さぁ!!!次の競技に移りましょう!!!2年男子短距離走に出場のみなさんは、速やかに整列して下さい」
午後の部で一番注目を集めるこの競技。
何故かって……
「きゃゃゃあ!!!和馬くぅーん、頑張ってぇ!!!」
「ヒロくん、カッコイイ!!!」
「健くぅぅん!!!きゃゃゃあ!!! こっち向いたぁぁ!!!」
あちこちから上がる黄色い声。
あたしの隣に座る女子が、健くんがこちらを向いたとはしゃいでいる。
まっすぐに、目が合った。
健くんは、こちらを見たまま、きつくハチマキを巻き直して、フっと口角を上げた。
ズキンと、軋む心臓。
痛くて、痛くて、痛くて。
大きく動く度に、言いようのない痛みに襲われた。
3人の中で、一番にスタートするのはヒロくんだ。
身長の低い順にスタートを切っていき、早くも、ヒロくんがスタートラインに並んだ。
地面に両手をついて構え、ピストル音と同時に駆け出した。
速い――…
サラサラなヒロくんの前髪が、後ろに靡く。
4人の中で、一番華奢なヒロくん。
軽快な走りで、白いテープを切った。
走りきったヒロくんは、こちらに向かって無邪気な笑顔で大きく手を振った。
「きゃゃゃあ!!!ヒロくんが手ぇ振ってくれたぁぁ!!!」
右手を軽く上げたあたしだけど。
周りの尋常じゃない反応に、ヒロくんに手を振り返すことができなかった。
そして――…
最後は、この2人。
D組は、他のクラスより若干人数が多い為、和馬くん、健くんの2人の出場が重なった。
2人は同時にスタートラインに並び、地面に両手をついて、合図を待った。
テント内の女子が全員立ち上がる。
黄色い声に耳をふさぎたくなったけれど、2人の様子にくぎ付けになったあたしは、そんなことに気を回していられなかった。
健くんが、こそっと、和馬くんに耳打ちした。
徐々に険しくなっていく和馬くんの表情。
――何を、言ったんだろう。



