紫陽花の短編集物語#1

第1話 幼馴染との思い出

同じ町に住み、毎朝待ち合わせて登校するのが日課。
お互いの家族のことも知ってるし、誕生日もいつも一緒に祝ってきた。
ある日、夏祭りの日。
望愛「ねえ雄大、覚えてる?小1のときさ、金魚すくいで私、泣いたやつ。」
雄大「うん(笑)おれ、代わりにすくってあげて…その金魚、まだ生きてんの?」
望愛「実はね、昨日、死んじゃったの。でも、最後まで元気だったよ。」
ほんのり沈む望愛の声に、雄大は少しだけ照れながら言う。
雄大「じゃあさ、今年は一緒にまた金魚すくい、しよ。今度はふたりでな。」

【言葉にはできない、想い 続く】






第2話 修学旅行

就寝前の自由時間。みんなワイワイ騒いでる中、望愛と雄大は旅館の廊下で、静かに隣り合って座っていた。
望愛「こうしてふたりで話すのって、地元じゃあんまりないよね。」
雄大「周りに誰かいると、なんか恥ずかしいからな。」
望愛「…でも、今日の夜景見てたら、あの頃のこと思い出した。」
雄大「どの頃?」
望愛「まだランドセル背負ってたころ。毎日、一緒に帰ってたじゃん。」
雄大「今も、気持ちは変わってないよ。」
ふたりの間に流れる、あったかくて、でもちょっと切ない静寂。
幼なじみだからこそ話せること、言えなかったことが、旅先でゆっくりと芽を出す。

【言葉にはできない、想い 続く】










第3話 部活帰りの約束

雄大はバスケ部。望愛は美術部だけど、たまたま帰りが遅くなった日。
体育館の扉を開けると、雄大がひとりでシュート練習をしていた。
望愛「まだ残ってたの?練習、頑張ってるね。」
雄大「望愛こそ、なんでここに?」
望愛「…ちょっと、描きたくなって。雄大のシュート、かっこいいから。」
そう言って、スケッチブックを開く望愛。
雄大は少し照れくさそうに笑って、それでもシュートを続ける。
雄大「今度、描いたの見せてよな。」
望愛「…約束ね。」
お互いに自分の世界を大切にしつつ、そっと寄り添える関係。
“恋”って言葉を使わなくても、伝わる何かがある。

【言葉にはできない、想い 続く】






第4話 すれ違う心

望愛は最近、美術コンクールの準備で放課後はアトリエにこもりがち。
雄大はバスケ部の試合が近づき、部活漬けの毎日。
気づけば、朝も一緒に登校しなくなっていた。
放課後の廊下ですれ違ったとき、ふたりはほんの一瞬、目が合った。
望愛「……お疲れさま。」
雄大「……うん。じゃあな。」
それだけ。
昔みたいに、笑い合う余裕が、どこかへいってしまった。

自分の部屋にて
望愛(心の声)
「会わないの、わかってた。でも、声が聞きたかった。
『がんばってる?』って、一言だけでよかったのに。」

雄大(心の声)
「話しかけたい。でも…今さら何て言えばいいんだよ。
のあ、変わったな。いや、変わったのは…俺か。」
【言葉にはできない、想い 続く】



最終話 言葉にはならなかった想い

望愛は駅のホームで、制服の袖を握りしめていた。
目の前に立つ雄大は、何も言わない。ただ、少しだけ笑った。
望愛「…行っちゃうんだね。」
雄大「ああ。でも、のあとは、ずっと俺の中にいる。」
次に会える日が来るのかも分からない。けど、それでも──
望愛「…好き。会えなくても、好きって、思ってるから。」
電車が到着して、ドアが開いた。
そして…閉まった。
残された風の中に、ふたりの“言葉にならなかった想い”だけが、そっと揺れていた。

【言葉にはできない、想い 完結】