――読み終えましたか。
いかがだったでしょう。
素晴らしい人生でしたか。
退屈な人生でしたか。
それとも、言葉ではうまく表せない何かが残りましたか。
私はいつも思うのです。
人は物語を読むとき、主人公の人生を追いかけているようでいて、
本当は自分自身を探しているのではないか、と。
あの人の喜びに心が動いたのも。
あの人の悲しみに胸が痛んだのも。
その人生のどこかに、あなた自身の姿を見つけたからかもしれません。
この図書館には、まだ無数の本があります。
今日読んだ一冊とよく似た人生もあれば、
まるで正反対の人生もあります。
けれど、不思議なことに、
どの本を開いても最後の頁には同じ余白が残されているのです。
誰にも埋められない余白。
それは、その本を読んだ人のための場所です。
だから、もしあなたが今日、
この一冊から何かを受け取ったのなら。
その続きを、あなたが生きて紡いでください。
……おや。
もうお帰りの時間ですか。
残念ですが、本は貸し出せません。
ここにある人生は、ここでしか読めませんから。
ですが、心配はいりません。
外へ出れば、あなた自身の本の続きを書くことができます。
一頁ずつ。
ゆっくりでも構いません。
誰かと比べる必要も、
立派な物語にする必要もありません。
この図書館で学んだことが一つあるとすれば、
どんな人生も、
本になるほどには尊いということです。
それでは。
またいつか、
あなたの本が、この棚に並ぶ日まで。
どうぞ、お元気で。



