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昔々のことです。

ある日、神様が引退することになりました。

理由は単純。

「疲れた」らしいのです。

世界がざわつき、天使たちは慌てました。

悪魔たちさえも驚く中、神様は本気でした。

「創世からずっと働いてるんだぞ」

不満げに机を叩く神様。

「その上有給もないんだ。

そろそろ後継者が欲しい」

神様の話をもっともだと思った天界は、求人を出しました。





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【募集】神様

仕事内容:世界の管理、運営、見守り

勤務時間:常時

休日:なし

給与:なし

福利厚生:なし

責任:無限

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応募なんか来るはずがないと思われました。

ところが。

なぜか来たのです。

山ほど来たのです。

「人類は暇なのか?」

神様は履歴書の束を見て呟きました。

応募者は数千人。

その中から最終面接に残ったのはたった六人でした。

そこで神様は、全員に同じ質問をすることにしたのです。

たった一つだけの問いかけ。

「あなたが神様になったとして、

世界から一つだけ消せるとしたら、何を消しますか?」



一人目の教師は少し考え、そして答えました。

「孤独です」

「ほう」

「勉強ができない子よりも、

自分が一人だと思っている子の方が苦しそうでしたから」

神様は静かに頷きました。



二人目の面接者は詐欺師でした。

神様の問いについて、詐欺師は即答しました。

「嘘です」

「おや」

「驚きましたか?」

「少し」

正直な神様に、詐欺師は笑います。

「嘘があるから私は生きられた。

でも、嘘のせいで泣く人もたくさん見ましたから」

淋しげに笑う詐欺師に、神様は何も言いませんでした。



三人目の高校生は長く悩みました。

そして、十分以上悩んだ末に言ったのです。

「諦めることです」

「苦しみではなく、ですか?」

「はい」

少年は拳を握る。

「失敗してもいいんです。

諦めなければ、その頑張りは何かに繋がっていくと思うから。」



四人目は何人もの命を救ったお医者様でした。

たくさんの命を扱ってきた医者は、一体どんな答えをくれるのだろう。

神様は少し、ワクワクしていました。

ですが、医者は間髪入れずに答えます。

「病気です」

思っていた答えと違った神様は、少し目を瞬かせました。

「.......単純ですね」

「私は単純な人間ですから」

医者は笑った。

「目の前で苦しむ人がいなくなるなら、それで十分です」

確かにそうだと、神様は少し自分が恥ずかしくなりました。



そうして面接者も残り2人。

五人目の神父は、首を横に振って答えました。

「私は何も消しません」

「なぜですか」

「苦しみも悲しみも、人を救う理由になるからです」

神様は少しだけ、目を細めました。



そうして、七人目です。

最後は十歳の少女でした。

「うーん」

少女は悩みます。

「一個だけ?」

「一個だけです」

「難しいなぁ」

思わず神様が微笑むと、ふと少女は尋ねました。





「神様は何を消したいの?」





神様は驚きました。

逆に質問されたのは、面接官になってから初めてだったからです。

「私ですか」

「うん」

「そうですね.....」

神様は少し考えました。

世界が始まってから今までのことを。

全て、思い出すように。

「後悔、かもしれません」

少女は首を傾げて言いました。

「でも.....後悔がなくなったら、みんな反省できなくなっちゃうよ」

その言葉に、思わず神様は笑いました。

本当に久しぶりに笑ったのです。



面接が終わり、天使たちが神様のもとに集まります。

「誰にしますか?」

「教師ですか?」

「お医者さんだよ」

「神父さんじゃない?」

やがて神様は、履歴書の束を閉じました。

「決めたよ」

天使たちが一斉に息を呑みます。

けれど神様は、その先を言いませんでした。

ただ、窓の外の世界を見ています。

子供の未来を想う人。

誰かに嘘を付く人。

青く真っ直ぐな思いを持つ人。

たくさんの命を繋いだ人。

芯が強く、自分を持っている人。

まだ幼いながらも、素敵な未来が待っているであろう人。

どの応募者にも正しさがあった。

どの応募者にも欠点があった。

だから神様は、顎の髭を撫でてこう言ったのです。

「私の後継は―――。」