どうぞご安心を。
難しい手続きは必要ありません。
会員証も、入館許可証も、この図書館には存在しませんから。
お好きなようにお過ごしください。
……とはいえ、少しだけ説明を。
この図書館には数え切れないほどの本が収められています。
天井まで届く本棚。
果ての見えない通路。
古い本もあれば新しい本もあります。
立派な装丁の本もあれば、どこにでもありそうな地味な本もあります。
けれど、それらは小説ではありません。
歴史書でもありません。
ここに並んでいるのは、誰かの人生です。
誰かが生まれ、笑い、悩み、愛し、傷つき、そして生きた記録。
人生そのものが、一冊の本となって並べられているのです。
有名な人の本もあります。
たった一人で生きた人の本もあります。
あなたが知る世界ではない場所で生きる人の本もあります。
もしかすると、あなたの人生を綴った本も、
どこかの棚にあるのかもしれませんね。
ですが、どれが一番価値のある本かなど、私にはわかりません。
人生に優劣をつけられるほど、私は賢くありませんから。
さて。
せっかく来ていただいたのです。
立ったままでは疲れてしまうでしょう。
どうぞこちらへ。
今日は、この棚から選ぶことにしましょうか。
どの本を開いても構いません。
きっと、その人なりの喜びがあり、その人なりの悲しみがあります。
あなたが共感する人生かもしれません。
まったく理解できない人生かもしれません。
それもまた、読書の醍醐味というものです。
……おや。
ちょうど良さそうな一冊がありますね。
この本にしますか?
それでは............ごゆっくり。



