翌朝。
スマホにセットした目覚ましの音で、理緒はゆっくり目を覚ました。
見慣れない天井。
一瞬だけ、自分がどこにいるのか分からなくなる。
それから昨夜のことを思い出し、理緒は小さく息を吐いた。
――本当に泊まったんだ。
ベッドから起き上がり、寝室を出ようとしたところで、ふと足を止める。
借りたスウェット姿のまま出るべきか、先に自分の服へ着替えるべきか、少し迷った。
でも、洗面所を借りるタイミングも分からない。
それに。
何となく、もう少しこのままでいたい気もした。
理緒は小さく首を振る。
「……顔だけ先に洗おう」
小さく呟き、寝室の扉を開けた。
リビングでは、誠さんがコーヒーを飲みながらスマホを弄っていた。
理緒に気付くと、こちらを見る。
そして開口一番、
「ぶかぶかじゃん」
理緒は少し気恥ずかしくなった。
「……おはようございます。それ、最初から分かってたじゃないですか」
「おはよう。まぁ、そうなんだけどさ……」
誠さんは途中で言葉を濁す。
「……?」
「いや、別に」
そう言って、誠さんは視線を逸らした。
何なんだろう。
そう思ったものの、理緒は深く考えないことにする。
「洗面所、お借りしてもいいですか?」
「どーぞ。洗顔フォームとかも適当に使っていいから」
「ありがとうございます」
理緒は軽く頭を下げて洗面所へ向かった。
顔を洗って戻ると、テーブルの上には、誠さんが新しく淹れてくれたと思われるコーヒーが置かれていた。
誠さんは、ソファで寝ている昌大さんを足で軽く踏みながら起こしている。
「昌大。朝飯食うぞ」
「痛い痛い痛い……起きるからぁ……」
理緒はその様子を見ながら、小さく口を開いた。
「朝食、もう食べますか? ……冷蔵庫開けてよければ、お弁当温めますけど」
「あー、助かる。サンキュ」
理緒はキッチンへ向かい、冷蔵庫からコンビニ弁当を二つ取り出す。
電子レンジへ入れて温め、その間に自分の朝食用に買っていたパンを持ってきた。
やがて朝食が揃い、三人でテーブルを囲む。
「いただきます」
どこか気だるい朝の空気の中、三人は静かにもぐもぐと食べ始めた。
誠さんは、おもむろにテレビを点け、朝の情報番組へチャンネルを合わせる。
映し出されたのは、いつも理緒が家で見ている番組と同じだった。
理緒はぼんやりと画面を見つめる。
初めての外泊。
初めて来た男子大学生の部屋。
なのに。
不思議なくらい、何でもない朝の景色に見えた。
―――
朝の身支度を終え、理緒は玄関へ向かう。
「……お邪魔しました」
すると、リビングから昌大さんがひょこっと顔を覗かせた。
「また来てねー」
「お前の家じゃねぇだろ」
すかさず誠さんが突っ込む。
理緒は思わず小さく笑った。
「……ありがとうございました」
扉を閉める直前まで、二人の楽しそうな会話が聞こえていた。
―――
「えー。でも、誠だって“また来てほしい”って思ってるだろ?」
理緒が帰ったあと。
部屋では、そんな会話が続いていた。
「そりゃ、戦力になるからな」
誠はコーヒーを飲みながら、何でもない調子で返す。
「そういう意味じゃなくてさぁ」
昌大はニヤニヤしながら続けた。
「理緒ちゃん、彼女にしたいんじゃないの?」
「そんなんじゃねぇよ」
即答だった。
「そっかー……」
昌大は意味ありげに頷く。
「前に、“会社が軌道に乗るまでもう彼女作らねぇ”って言ってたもんな」
「あぁ」
「じゃあ、僕が理緒ちゃん狙ってもいい?」
「ダメだ」
今度は、誠の返答が早かった。
「なんでだよぉ」
「会社内で恋愛なんかしたら、面倒起きるだろ」
「じゃあ誠も、絶対理緒ちゃんに手出さないんだ?」
「……あぁ」
「絶対?」
誠は少しだけ黙る。
それから、コーヒーを飲みながらぼそっと言った。
「……多分な」
「ちょっと! それは違くない!?」
スマホにセットした目覚ましの音で、理緒はゆっくり目を覚ました。
見慣れない天井。
一瞬だけ、自分がどこにいるのか分からなくなる。
それから昨夜のことを思い出し、理緒は小さく息を吐いた。
――本当に泊まったんだ。
ベッドから起き上がり、寝室を出ようとしたところで、ふと足を止める。
借りたスウェット姿のまま出るべきか、先に自分の服へ着替えるべきか、少し迷った。
でも、洗面所を借りるタイミングも分からない。
それに。
何となく、もう少しこのままでいたい気もした。
理緒は小さく首を振る。
「……顔だけ先に洗おう」
小さく呟き、寝室の扉を開けた。
リビングでは、誠さんがコーヒーを飲みながらスマホを弄っていた。
理緒に気付くと、こちらを見る。
そして開口一番、
「ぶかぶかじゃん」
理緒は少し気恥ずかしくなった。
「……おはようございます。それ、最初から分かってたじゃないですか」
「おはよう。まぁ、そうなんだけどさ……」
誠さんは途中で言葉を濁す。
「……?」
「いや、別に」
そう言って、誠さんは視線を逸らした。
何なんだろう。
そう思ったものの、理緒は深く考えないことにする。
「洗面所、お借りしてもいいですか?」
「どーぞ。洗顔フォームとかも適当に使っていいから」
「ありがとうございます」
理緒は軽く頭を下げて洗面所へ向かった。
顔を洗って戻ると、テーブルの上には、誠さんが新しく淹れてくれたと思われるコーヒーが置かれていた。
誠さんは、ソファで寝ている昌大さんを足で軽く踏みながら起こしている。
「昌大。朝飯食うぞ」
「痛い痛い痛い……起きるからぁ……」
理緒はその様子を見ながら、小さく口を開いた。
「朝食、もう食べますか? ……冷蔵庫開けてよければ、お弁当温めますけど」
「あー、助かる。サンキュ」
理緒はキッチンへ向かい、冷蔵庫からコンビニ弁当を二つ取り出す。
電子レンジへ入れて温め、その間に自分の朝食用に買っていたパンを持ってきた。
やがて朝食が揃い、三人でテーブルを囲む。
「いただきます」
どこか気だるい朝の空気の中、三人は静かにもぐもぐと食べ始めた。
誠さんは、おもむろにテレビを点け、朝の情報番組へチャンネルを合わせる。
映し出されたのは、いつも理緒が家で見ている番組と同じだった。
理緒はぼんやりと画面を見つめる。
初めての外泊。
初めて来た男子大学生の部屋。
なのに。
不思議なくらい、何でもない朝の景色に見えた。
―――
朝の身支度を終え、理緒は玄関へ向かう。
「……お邪魔しました」
すると、リビングから昌大さんがひょこっと顔を覗かせた。
「また来てねー」
「お前の家じゃねぇだろ」
すかさず誠さんが突っ込む。
理緒は思わず小さく笑った。
「……ありがとうございました」
扉を閉める直前まで、二人の楽しそうな会話が聞こえていた。
―――
「えー。でも、誠だって“また来てほしい”って思ってるだろ?」
理緒が帰ったあと。
部屋では、そんな会話が続いていた。
「そりゃ、戦力になるからな」
誠はコーヒーを飲みながら、何でもない調子で返す。
「そういう意味じゃなくてさぁ」
昌大はニヤニヤしながら続けた。
「理緒ちゃん、彼女にしたいんじゃないの?」
「そんなんじゃねぇよ」
即答だった。
「そっかー……」
昌大は意味ありげに頷く。
「前に、“会社が軌道に乗るまでもう彼女作らねぇ”って言ってたもんな」
「あぁ」
「じゃあ、僕が理緒ちゃん狙ってもいい?」
「ダメだ」
今度は、誠の返答が早かった。
「なんでだよぉ」
「会社内で恋愛なんかしたら、面倒起きるだろ」
「じゃあ誠も、絶対理緒ちゃんに手出さないんだ?」
「……あぁ」
「絶対?」
誠は少しだけ黙る。
それから、コーヒーを飲みながらぼそっと言った。
「……多分な」
「ちょっと! それは違くない!?」



