台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

――最終週初日の、早朝5:00。
瑠奈失踪が発覚する、3時間前。

まだ波が白む明け方の海は、今日も穏やかな潮騒を奏でている。

この時間だけは人払いしてもらったから、白い砂浜にぽつんと立つのは私だけ。
だけど感傷的になれないのは、その周りを厳つい撮影機材がぐるりと取り囲んでいるからだ。


「香月さん」


後ろから私を呼びかける声に振り返る。
見れば数メートル先に、紫苑がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


「――ごめんね、こんな朝から呼び出しちゃって!」


私を囲む機材の包囲網の中に紫苑が入ってきたのを確認して、明るく謝罪する。

紫苑は何かを察しているのか、ほんの少し釈然としない空気を醸しつつ、何でもない顔で私の目の前に立った。

「いいけどさ。……何?その格好」

紫苑が訝しんで、でも少し緊張気味に私の姿を眺める。

白い半袖のワイシャツに、リボン。
ピンクのベストは着ていない。
黒地のプリーツスカートは少しだけ長く丈を戻した。

メイクも、普段通りのナチュラル。
髪はストレートに伸ばしたまま。

紫苑の前にいるのは、作った“瑠奈”じゃない。
ありのままの私だ。