16:00。
時間が進むのが恐ろしく遅い。
ようやく夕方か、なんて、少しでも時間を進めるために見ないようにしていたスマホを見て思った。
美玲が来た少し後には彩加も様子を見に来てくれて、なんだかんだ体調を気遣ってくれた。
『瑠奈ってさ……あー、いや!今聞くことじゃないか』
去り際には、気まずそうにそんな言葉を残していった。
後に続く言葉はたぶん、“爽真とどうなってるの?”とか、“紫苑が好きなんじゃないの”とか、そういう類のものだったのだろう。
いつもなら目の前のミッションや撮影に割かなくちゃいけない思考を、今日は全て先のことを考えるのに使えるから逆にごちゃついてしまう。
ベッドから起き出して、お見舞い用みたいになっていた椅子をデスクに戻す。
それからそこに座って、膝に手を置いて息を吐いた。
――カメラの前で、“瑠奈”として最後まで正しい振る舞いをする。
その意思は、私の中では変わらない。
アオバケは、画面を通して見る人にとっては私たちのリアル。
けれど、私にとっては台本のある超長編の演劇舞台。
そこを飛び出して私的な感情でシナリオを壊すなんて、絶対にしてはならないから。
……けど、爽真。
それに、紫苑。
『意識のない瑠奈から離れてまで戻る仕事なんて、悪いけど俺には何もない』
『好きだよ、俺――香月さんのこと』
カメラの外で起こってしまった恋にも、決着をつけないといけない。
『でも、中途半端なままにするなら――私も、諦めないからね』
発破をかけるみたいな美玲の言葉もリフレインする。
(わかってる、わかってる。わかってるよ……!)
だから今日の深夜、爽真と話す。
隠してきたこと全部話して、謝って。
仕事のことも、爽真とのことも、私がどうすべきだと考えていて、どうしたいと思っているのかも、伝える。
(今までそれを“爽真はわかってる”って省略してきたから、爽真は傷ついたんだよね……)
それをもう、知ってしまったから。
もう宙ぶらりんにはしない。
それだけは、決めている。



