台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


――――
――……

――コンコンコン

控えめなノックの音で目を覚ます。
のそりと布団から顔を出して、枕元に置いたスマホを確認すると時刻はちょうど11時だった。

「はーい」

まだ寝ぼけた声に少しの砂糖をまぜて、ノックに応じる。
すると、慎重すぎるほど慎重に開いたドアから、美玲が顔を覗かせた。

「ごめんなさい……起こしちゃった?」

「ううん、平気だよぉ。ちょうど今起きたとこ」

体を起こして“瑠奈”の笑顔で微笑みかける。

とはいえ、メイクもなし、髪もちょっと乱れたストレート。

甘ったるい表情やパジャマと、童顔ながらスッキリとした容貌とのギャップに、少しだけ美玲が話し出すのが遅れた。

「あ、……えと、お昼ご飯食べられそうなら、どうかなと思って」

中に入ってきた美玲は、小さな土鍋と取り分け皿を乗せたトレイを持っている。

一向に目が合わない様子から、気まずさがひしひしと伝わってきた。

「えー?じゃあ食べようかなぁ」

それに気付かないふりをして、なんでもない顔で頷く。

美玲はおずおずと中に入ってくると、ベッド横に置きっぱなしだった椅子に、遠慮がちに腰掛けた。

「はい、どうぞ」
「うん。ありがとー♡」

受け取ったトレイを伸ばした膝の上に乗せ、土鍋の蓋を開ける。

中身はたまごの雑炊。
熱々ではない、ちょうどよく立ち上る湯気がふわりと出汁と卵の匂いを運んできた。

「いただきまぁーす」

取り分けた分をひと匙すくって、ぱくり。
見た目も香り通りの、素朴で優しい沁みる味。

「……これ、美玲ちゃんが作ったの?」

「あ、……うん……」

なんとなく表情が翳ったように見えた私に、美玲が不安そうな顔をする。

……やっぱりこの子は、ちょっと気弱な優しい子。

敵わないなぁって、苦笑にも似た微笑が漏れた。

「すごいね。瑠奈、料理全くできないから。
美玲ちゃんに憧れちゃう」

垂れ下がっていた美玲の眉尻が、ほんの少し元に戻る。

どんな表情をしていてもヒロインの輝きを放つ彼女に、ちゃんと顔を向けて向き合った。