「……瑠奈が、自分の仕事を大切にしてることはわかってる」
静かで、消え入りそうな声。
爽真が深く俯いて、狭い視界では表情が見えなくなる。
「何考えてるのか知らないけど――
ここ最近紫苑と何かあったのも、余計にのめり込んでるのも、なんとなく感じてた」
目元を覆う指先に、ほんの僅かに力が入る。
少し震えているような、そんな力の入り方だった。
「瑠奈が仕事をやりきりたいなら邪魔しないし、その結果も受け入れる。
――だけど、これは違うだろ」
爽真が傷ついているような気がして、たまらず目元を抑える手を掴んで退かす。
力が入っていても傷つける気はないその手はあっさりと私に持ち上げられて、瞬間、悲痛そうな爽真の顔が目に飛び込んだ。
「瑠奈が怒るのなんてわかりきってた。
けど、意識のない瑠奈から離れてまで戻る仕事なんて、悪いけど俺には何もない」
――何も、言えない。
真正面から降ってきた爽真の感情が、あまりにも大きすぎて。
正しい答えも、選ぶべき選択も、
爽真を前にすると全部消し飛んでしまう。
「ごめん……爽真……」
目の上で掲げたままの爽真の手をぎゅっと握りしめる。
気付かなくてごめん。
見ないふりをしてごめん。
だけど無理だ。
もう無視できない。
「隠してきたこと、全部話す。
もう爽真には嘘もつかない」
強く強く握った手を、自分の額に当てて懺悔する。
きつく瞑っていた目をそっと開けて、爽真に顔を向けて見つめた。
「……だから、深夜0時。」
爽真と視線が絡んで、きゅうっと胸が締まる。
額に置いた爽真の手を握ったまま、今度は口元に移動させた。
「……今日、会いに来て。爽真……」



