台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

――涼しい空気。少し寒いくらい。
頭はぼんやりとしているけど、朝ほどの重怠さはない。

ふわふわと、柔らかい何かに体が沈んでいる。


身体が深く息を吸い込むたび、徐々に濃く香りだす屋台のような夏の匂い。

――淡いのに、なぜかそれを貫くように嗅覚に届く石鹸の香り。


あ。知ってる。


これは、爽真の匂いだ。


ふっと目を開けると、ぼやけた視界に私を見下ろす人の影。

目が完全に開く頃には、それが爽真なのだとわかった。


「……爽真……?」

なんか泣きそうな顔してる。
最近の爽真は、いつもどこか切なそうだ。

大丈夫だよ。

心でそう語りかけて、それを伝えるように指が動く。
爽真のわかりやすくハッとした顔を見て、なぜか口元が緩んでしまった。


「……ここ、どこ?」

「……。……シェアハウスの、瑠奈と春野の部屋……」

「……男子禁制なんだけど?」

「ちゃんと許可とった」

「それ、どういうシチュエーション……」

和んだ心が一変、状況を思い出して一気に青ざめる。


「そうだ!ミッション!
え、じゃあなんで家――痛ったぁ!」


目覚めきっていない体を急に起こそうとしたら、頭痛に遮られてダウンする。
仰向けに倒れて両手で頭を抱える私に、爽真が少し怒った顔をした。

「まだ寝てろ。疲労からくる熱で倒れて、2時間半は意識飛ばしてんだぞ」

ぐ。
ピリついた視線に、押し負けて口を結ぶ。

怒られて拗ねた子どものように眉を寄せて、反抗的に爽真を見ていると、また重要なことに気がついた。