台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


「紫苑、誰かスタッフ呼んで」

爽真が私の体を支えたまま、ゆっくりとその場に座って腕の中で私を楽な体勢にさせる。

複雑そうな顔をした紫苑が、それでもすぐに頷いてスタッフルームを出ていく。

数分もしないうちに、数人のスタッフが走ってきた。


「大丈夫!?貧血とかかな!?」

「救護スタッフ今きます!」

「とりあえず休めるとこに移動しよう。
店にできるだけ近いとこにロケ車回して――……」

慌ただしく対応に追われるスタッフの中心で、爽真は私を離さない。

横にするにも狭いし、床だし。楽な体勢をとらせたい。
多分そういう気持ちから。


「瑠奈ちゃん大丈夫ですかっ!?」


少しして、ひよりがスタッフルームに駆け込んでくる。
その後に、美玲も着いて走ってきた。

「車来ました!」
「よし、担架まだ――……」

「俺が運びます」

火事場の喧騒を鎮圧する、落ち着いた低い声。
返事も待たず、爽真が軽々と私の背中と膝を抱えて立ち上がった。


「……いや、でもそれは……」

まずいのでは?と顔を見合わせるスタッフ達。

けれど爽真は動じない。
焦りも不安も全てを制圧した威圧感のある目で、真っ直ぐにその場にいる人を見た。


「キャストが仕事中に倒れる以上の大事なんてないだろ。
早く休ませたいからそう言ってるだけです」

しん、と静かになるスタッフルーム。
それでも判断しかねている大人達に、美玲も小さく手を挙げる。

「……もう車が来てるなら、裏口から出れば問題ないんじゃないでしょうか……?
少し人もいますけど、あの、できるだけ素早く移動すれば……」


結論が出るのを待たずに、私を抱えた爽真は部屋を出ようとする。
慌てたスタッフが制止しかけたのを、ひよりの大声が遮った。


「いいから爽真くんを通してあげてくださいっ!
瑠奈ちゃんが死んじゃいます!!」


普段の小動物感・マシュマロボイスからは想像できない鬼気迫る迫力に、全員怯む。

その隙をついて爽真がスタッフルームを抜け出すと、キッチンとは逆方向の裏口に向かって一直線に走った。