台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

8月27日。金曜日。
9:30。

今日も元気に海の家のバイトミッション――なんだけど、開業直前の私の心はどんよりと沈んでいる。

(結局、ほとんど寝付けなかった……)

部屋に戻っても葛藤する自分の恋心と理性に、気付いたら夜もだいぶ更けていた。

あんなに疲れていたはずなのに。おかしい。


(体おもー……。今横になったら秒で寝られる)


女子4人でもちょっと狭めのスタッフルームで着替えながら、思わずため息をひとつ。

男子4人は、ここで先に着替えてホールへ出た。
打ち合わせまであと数分。怠くても急がないといけない。

心はどんよりしているけど、店のスタッフTシャツに袖を通す。

隣で着替えていた美玲が、心配そうに顔を覗いてきた。

「瑠奈ちゃん、今日はいつも以上に顔白いけど……大丈夫?」

垂れ下がる眉に、優しげな丸い瞳。
シンプルなポニーテールが、清楚な美玲に似合ってる。

(私より色白な人が、何を言っているのやら)

「大丈夫♡瑠奈、今日ファンデ変えたの〜」

にっこりと強気に笑って、さりげなく距離を取る。

心にちくりと罪悪感。
だって美玲こそ、爽真のことが好きだから。

「美玲!瑠奈はいつもふざけた回答しかしないからっ!
ほら、支度できたんなら行こ!」

美玲の背後からひょっこりと顔を出した彩加が、私を指さしながら失礼なことを言う。

ひよりもTシャツの裾を伸ばしてから、ボサついた髪を手櫛で直すと私の方を向いた。

「あ……、ごめんね。先に行っててくれない?
ひよりちゃんと一緒に。ね?」

美玲が私に話しかけようとしたひよりに、先に微笑みかける。
アイコンタクトのような仕草を察して、ひよりが彩加に向き直った。

「行きましょう、彩加ちゃん。美玲ちゃんにはまだお支度があるのかもしれませんっ」

「ええー?まぁ、わかったけど……遅れないようにしなよ?」

ちょっと残念そうな彩加をつれて、ひよりはスタッフルームを出ていく。
パタンと古いドアが閉まる音がした。