台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―

胸がいっぱいになって、速くなる鼓動に心を支配されそう。

空いたままの右隣を一目見て、もう真っ暗になったスマホを握りしめる手に力がこもる。
今すぐ会いになんていけないのに、無性に走り出したくなった。

気づかないほど近くで、ずっと私に向けられていた感情が、何から生まれたものなのか確かめたい。

その想いが、私と同じだったとしたら――……

「……っ、」

これ以上ないくらい高鳴っていたはずの鼓動が、また一段高くなる。

自分でも驚くほど喜んでいることが、突然怖くなった。


爽真と両想いだってわかってしまったら――多分私、もう引けなくなる。


(でもそれはだめ。それだけは……!)


心の奥に湧いてしまった期待と欲を、理性が必死に食い止める。
下ろしかけた膝に顔を埋めて、何度も首を横に振った。

だって。

画面の中の私は、紫苑に一途なあざとい悪女。
爽真は、美玲に救われて恋したクール男子。

私と爽真を繋ぐフラグなんて、画面の中にはなに一つとして出てこない。

ここで私が感情に走ったら、爽真と私は間違いなく大怪我をする。


(でもこのまま台本を完遂したら、爽真を失っちゃうよ)


頭の片隅から、泣きそうな声がする。
それは、私自身の恋心の声だ。

「あ――……!どうしよう、これ……!」


台本を貫き通して、爽真を守るって決めたのに。

その意思を爽真のフラグに揺らされるなんて、思ってもみなかった。