「うわっめっちゃ可愛い!バイトの子?」
着いた卓は、多分大学生くらいの男子2人組の席。
明るい髪色に派手な海パンと、ちょっとチャラついた人たちだ。
「バカ!なんかカメラマンいるし、芸能人だろ!
どっかのアイドルグループの子とか〜?」
――こういう人たちには、甘い顔をしてはいけない。
なぜなら、絶対めんどくさいことになるから。
かといって、今はカメラと、視聴者の前。
どこをどう切り取られるかわからない今――
大量偽フラグばら撒きキャンペーン中に、本物を落とすわけにはいかない。
(まぁ危ない目にあったら、流石にスタッフが止めに入るでしょ)
そう思うことにして、注文伝票片手に愛想良く笑いかけた。
「違いますよぉ。芸能人っていうかぁ、瑠奈、アオバケっていう恋リア番組に出ててー……」
職業・女優。胸を張って言えないのが虚しい。
「うわ、アオバケ!なんか名前だけ聞いたことあるわ!」
「てか君、ルナちゃんって言うんだー。かわいー♡」
注文する気もなく盛り上がる男たち。
周囲には絶え間ない「すみません」の呼び出しと、忙しなく動き回るひよりと奥さんの気配。
(これだけ付き合えばもう充分か)
さっさと離脱しよう。そう思った時――
「恋リアってあれでしょ?配信でガチで男に好き好きアピールするやつ」
「何それ、軽そー。ね、俺らにもやってよ。
この後休憩とかさ……」
1人の男の手が、無遠慮に私に伸びてくる。
反射的に伝票で叩きそうになったのを、爽真の声が遮った。
「瑠奈、注文溜まってる。早く運んで」



