「あ、おはよう。爽真くん」
背中越しに聞こえた、美玲が紡ぐ名前にドキッとする。
「……あぁ、うん」
続いて聞こえる、頷くだけの愛想のない掠れた低い声。
カップを選ぶ指先が、なんとなく脈を打ち始めた気がした。
別に、なんでもないでしょ。
昨日うっかり素を出したからって、動揺するようなことじゃないし。
私の視界が僅かに翳る。
隣に誰かが立った。
昨日知った、石鹸の匂い。
ここで反応しないのは、“瑠奈”的におかしい。
ゆっくりと隣の人を見上げた。
「……ども」
私と目があった瞬間、声をかけてきた。
淡白だけど、ちゃんと挨拶。
なんとなく照れてるように見える澄んだ目が、私のことを見下ろしている。
「……おはよっ、爽真くん♡」
「…………」
スン、と爽真の瞼が半分落ちる。
期待外れ、みたいなそんな顔。
……なんで不服そうにされた?今。
なんかムカッ。
2人ともカメラに背を向けて並んでるから、私も遠慮なく訝る目線を爽真に送る。



