「紫苑くん♡おはよぉ。
コーヒー?いい匂いだねっ」
背もたれに肘をついて、紫苑の方に身を乗り出す。
「……瑠奈ちゃんも飲む?私、淹れてくるよ」
美玲は躊躇いもなく立ち上がる。
けれど一瞬だけ、その目が紫苑のことを見た。
「美玲ちゃん優しーい♡
でもいいかな!瑠奈、コーヒー嫌いだから♡」
にーっこりと満面の笑み。
優しい笑顔のまま固まった2人を見て、満足げに心の中で頷く。
「紫苑くんのお隣行ってもいい?
瑠奈、ミルクティーでも飲もーっと♪」
るん♪とマイペースにキッチンに向かって、画角の外に出る。
これだけ引っ掻き回せば要求以上でしょ。
これは、今日の夜のイベントに向けた布石。
私の、ではなく番組の、だ。
――それにしても、こんな早朝にやる必要あった?
【美玲と紫苑の2人の世界を邪魔する瑠奈】
って絵がほしいなら、他の演者にも説明して人払いすればいい。
なのに、わざわざ誰も起きてこないような早朝を選んだのは、なんで?
まるで、他の人には知られたくないみたい。
……いや、考えすぎ?
ここには内側の人間しかいないわけだし……
食器棚のガラス戸を開けるフリをして、周りに背を向けて考える。
すると、男子フロアから誰かが降りてくる足音が聞こえてきた。



