「……!」
険しい顔が染み付いた皺と、口を真一文字に結ぶ威圧感に、勝手に背筋が伸びる。
巻さんは私たちの目の前まで来ると、ギロリと迫力のある視線を私に刺す。
何を言われるのかと袋を持つ手に力が入って、膨らんだビニール袋がガサリと音を立てた。
「今日一日、悪くない働きだった」
少し掠れているのに深みのある不躾な声と、正反対の言葉にきょとん。
褒められたと脳が理解するまでに、しばらくかかった。
私がフリーズしている間、巻さんの視線がジロリと爽真に移動する。
爽真は動じることもなく、むしろその圧を一手に受けるかのように半歩私より前に出た。
巻さんの目が、スッと鋭く細くなる。
強さが鈍らない爽真の目を見て、ハッと呆れたように笑った。
「瀬名くんは……少しは慎重になったようだけどね。
――まだまだ青いな」
厳しめの評価なのに、強気な爽真の態度は揺らがない。
まるで何を言われてもそこだけは曲げないと、主張しているかのようだった。
巻さんがまた息を吐いて、目を逸らす。
かと思えば、唐突に高そうな財布を取り出して千円札を抜き取った。
「でもまぁ、今日くらいは30分の自由を許そう。
そのくらいの働きを、君は“今までも”してくれていたからね」
私に千円札を差し出しながら、巻さんは近くのスタッフに声をかけて私たちの荷物を受け取るように指示する。
あっという間に片手にかかっていた重さが取り払われて、私も爽真も手ぶらになった。



