『第三問。犬派?猫派?』
『……。……猫』
――もしかして、
解答、合わせようとしてた?
(――――だめ)
都合よく解釈しそうになって、慌てて心に蓋をする。
店内に流れる流行りの曲が、メロディラインを変えようとしている。
沈黙が不自然になる前に、“瑠奈”の演技に戻らなくちゃ。
「しょーがないなぁ。
美玲ちゃんはぁ、アイスとかバニラ系選びがちだからクリーム系がいいと思うよ?これとかぁ、こっちとか……」
手に持っていた商品を一度戻して、ロールケーキやミルクサンドを順番に指差していく。
爽真はそんな私の指先を目で追いながら、話を聞いているのかいないのか……
私と爽真の間にあったカゴをさりげなく持ち替えて、ただじっと黙っている。
「……じゃ、それ全部」
他に3つくらい候補を挙げたところで、爽真はあっさりとそう言って商品をカゴに入れていく。
呆気に取られているうちに、飄々とした態度でこうとも付け足した。
「好み、知らないし。選べたほうがいいだろ」
(ああ、そういう……)
なんて不器用で雑な優しさ。
だけど、その優しさを向けられる美玲が、ちょっと羨ましくもあったりして。
すでにパンパンだったカゴの上に並ぶ、甘ったるそうなスイーツたち。
選んだのは私だけど、そこには爽真なりの思いやりが乗っかっているように見える。
「紫苑くんのは、どれがいいかなぁー」
見てるだけで胸が焼けてきて、裏の商品棚を見るフリをしてそこに回り込もうとする。
すると、爽真が目の前にあったクリーム入りのどら焼きをパッと手に取った。
「アイツにはこれ。決まり」
「え」
何か言う間もなく、向きを変えた爽真はさっさとレジに向かって歩き始める。
「どうして勝手に決めちゃうの、爽真くん――」
「アイツはこれが好きって言ってた」
私が追いかけようとした途端足を止めて、振り返れば真顔でそんなことを言う。
(……ホントに?食の好みについて話し合うような2人に見えないんだけど)
疑わしいけど、そう言われたら“瑠奈”は引き下がるしかない。
「そうなんだっ知らなかったぁ。
じゃあそれにする♡爽真くんありがとー♡」
爽真は返事をすることもなく、また前を向いてレジに向かう。
爽真が嘘をつく時は、淡々としすぎていて。
どこまでが本当でどこまでが嘘なのか、私には判別できなかった。



