17:05。
たった今生配信を終えた、みたいな顔で私と紫苑は2人一緒にリビングに戻った。
「たっだいまぁ♡」
“瑠奈”は、紫苑と2人っきりで撮影できてご満悦。
視聴者にも相性のいいところを見せられて上機嫌。
景気良くリビングのドアを開けながら、満面の笑顔の裏では必死に役を頭に縫い留めている。
「おかえり、結構かかったね」
大和の声と共に、ダイニングテーブルを囲んで談笑していたみんなが一斉に振り返る。
その端っこには爽真もいて、無感情な目が他の人より一歩遅れてこっちを見た。
“瑠奈”なら、今こそ美玲に紫苑と私は距離を縮めてるって見せつけたい。
多分、そのために露骨に紫苑にくっつく。
“瑠奈”なら。“瑠奈”なら――……
カッと心の中で目を見開いて、ガラ空きの紫苑の腕をロックオンする。
多分わざと隙を見せてくれてるんだろうけど――
自分の手が、思うように伸びていかなかった。
(無理!!くっつけない!!)
パッと顔を背けて、唇を口内に巻き込んで引き締める。
明日には――いや、数時間後ならできる。
でも。今は。
『好きだよ。俺――……香月さんのこと』
困ったように笑う紫苑に言われた言葉が、まだ脳内で鮮明に再生できてしまって――
例え役としてでも、触れるのを躊躇ってしまう。
廊下を無言で歩いてきてしまったのがいけなかった。
あの部屋を出る直前、無理してでも腕に抱きついておくべきだった。
そしたら、心を整える猶予があったのに。



