バクンと胸を打つ衝撃。
心臓も体も表情も何もかもが、その動きを止めた。
「――す……?え……?」
石のようになった私を見下ろして、紫苑はクッと肩を揺らす。
私に触れるかどうか迷って上がりかけた手の平を見つめて、そっとその場で握り込んだ。
「やっぱり気づいてなかった。ホント鈍いね、香月さん」
弱気になった手を隠すように、紫苑はポケットに手を突っ込む。
短く吐き出したため息は、安堵と呆れ混じりの吹っ切れたような音だった。
「ま。クランクアップの後にでも返事、聞かせてよ。
まずはアオバケ、ちゃんと成功させないとね」
紫苑はあっさりそう言うと、軽やかに踵を返してドアに向かって歩いていく。
私に背を向けたその顔は、カッコつけて笑っているのに、笑いきれてはいなくて。
ドアノブにかかる紫苑の手が、開けるのを一瞬躊躇う。
けれど一息でそこを開け放つと、湿気った生温かい風が室内に流れ込んでくる。
一歩廊下に出て、私の方に振り向いた紫苑の顔はもう、完璧な王子の顔だった。
「……戻ろっか。瑠奈ちゃん」
「………。……うん」
即座に演技を返せなくて、曖昧に頷いてぎこちなく立ち上がる。
隕石のように降ってきた紫苑の感情の、受け止め方がわからないまま。
今日の夜には、爽真との2ショットタイムが待っている。



