「撮影初日。どうして陸とひよりに、瑠奈がやばい奴だって吹き込んだの?」
「……あ、」
美玲の顔が、みるみるうちに罪悪感に染まる。
そんな様子に苦笑が漏れる私の方が、よっぽど悪い奴だ。
「ごめんなさい。こんなこと言い訳にしかならないんだけど……
あの日巻さんに、香月瑠奈ってキャストは問題がある子だから今後のためにも避けた方がいいって言われて……。
それを、ひよりちゃん達にも共有してしまったの」
――美玲の脳裏に、あの時のことが蘇る。
私と美玲が初めて顔を合わせて、すぐに私が巻さんに連れて行かれた、あの時。
『いきなり呼び出しなんて、瑠奈ちゃんどうしたんでしょう?』
『あのオッサン、怖い顔してたッスね〜』
(打ち合わせ以外で呼びつけられるなんて、やっぱりあの子には何かあるんだ)
『……2人は、香月さん、と……もう仲良くなったの?』
これから始まる長い撮影期間と、それを揺るがす可能性のある存在への、漠然とした不安感。
『はいっ。ほんの少しお話ししただけですけど……優しい人でしたよっ』
『やたらきゃぴきゃぴしてましたけどね〜』
(そっか。
……そうなの?本当に?)
だってここは、台本で塗り固められた嘘の世界。
“はじめまして♡”
そう言って笑ったあの子の完璧な顔だって、嘘でできているのかもしれない。
『あ、の……でも、さっき巻さんに……』
言った瞬間、2人が顔色を変えた。
“でも、そうじゃないかもしれないし”
咄嗟に思ってそう言ったけど、そんなの気休めにもならなかった。



