再び、重く静まり返る部屋。 爽真の視線が、紙袋から覗くふわふわの丸いラッコの頭に落ちる。 その脳裏には―― 暗闇の中で、「全然似合わない」と長い黒髪を揺らして笑う女の子がいる。 渡すつもりなんてない。 そうする資格も、大義名分も持っていない。 ただ――あれを手にした瞬間、そんな場面を想像してしまって、誰にも渡せなくなっただけ。 宛先のないぬいぐるみを袋の中から取り出して、キャリーケースの中にしまい込む。 そうしなければ、今夜―― 会いに行きたく、なってしまうから。