不意に爽真の視線が持ち上がる。
気怠げな瞳が急に私を見るから、思わずドキッと胸が跳ねた。
「こっち」
爽真はそっけなく左手に持ったサンプルを指差す。
それは、リリー系の爽やかな香りのする方だった。
「……じゃあこれにしよっ。爽真くんの好きな匂いになりたいもん♡」
用意してた返事がワンテンポ遅れた。
胸が妙に落ち着かない。
完全にペースを乱されてる。
(これはだめだ。昨日のことを早急に精算しないと)
“ぶりっこ、クール男子にあしらわれる”以外、ろくなエピソードも作れないまま。
私たちのペアは最速で買い物を終えて、半分以上時間を持て余すことになった。



