「ね、爽真くん。
どっちの香りが好きっ?」
しーん。また無反応。
ショッピングモールの明るすぎるアナウンスが、不自然な沈黙を際立たせる。
あ――――、スベッた。もう最悪……
笑顔の裏で打ちひしがれていると、
急に爽真の顔が近づいてきた。
(へっ!?)
驚いてビクッと揺れかけたのを、力を込めて堪える。
鼻筋の通った綺麗な顔が、私の頬の横に掲げた香りサンプルの前で止まる。
ずっと香ってた柔軟剤の甘ったるい匂いが、クリアな石鹸の香りに上書きされた。
「……」
爽真は何も言わない。
けど、スン、と小さく香りを吸い込んだ気配がする。
一旦顔が離れて、今度は反対の頬に近づいてくる。
「……っ、」
この人、やっぱり距離感おかしい。
しかも、律儀に香りを確認してるから、なかなか離れない。
こんなことで動揺したら負けだと、必死に一点を見つめる。
(こんなの、どっちだっていいのに……っ)
離れたい気持ちを飲み込んで、「どっちかな」と笑顔を保った。



