「!!」
光の速さで爽真から距離をとって、物音がした階段の方に背を向ける。
「……」
私の目線の位置で屈んだままの爽真の顔が、今度は無を通り越して虚無な顔になっていた。
「あれ、今日も早いの?2人とも」
穏やかで落ち着いた低めの声。
大和の声だ。
「……8人分の食事の支度を1人でするのは手間がかかるからな」
淡々と言っているつもりの爽真の声に、若干のトゲが混ざっている。
「瑠奈は戦力にカウントされてないんだ」
「戦力外どころか、手間増やされるからな」
「……あれ、なんか機嫌悪い?」
「寝起きはいつもこんなんだけど」
ほんの少しの違和感を持ちながらも、大和は朗らかに会話を繋ぐ。
「大和も早くないか?まだ6時半だけど」
「俺、いつもこのくらいだよ。
カメラ回る前にコーヒータイムしたいからさ」
言いながら、大和の足音がこっちに近づいてくる。
背中越しに、爽真がエプロンを広げる音や調理器具を取り出す音も聞こえ始めた。



