(……いや、ないな。余計におもちゃになるだけだ)
作った“瑠奈”と素の“私”の境界を余計に曖昧にされて、
カメラの前で“瑠奈”として動きにくくなる気がする。
(それに、これ以上この場を荒らされるのも困る)
だから、――……
「うんっ。そうだね♡」
内股気味に足の角度を変えて、緩く体を傾かせてにっこりと甘く微笑む。
「“今日だけは”、紫苑くんも入れてあげる♡」
砂糖たっぷり致死量ボイスは、宣戦布告を受けて立つ証明。
私の取るべき最善手は、
この場でも、“悪女の瑠奈”でいることだ。
綺麗な弧を描いていた紫苑の口元が、妖しく角度を深くする。
長い睫毛に囲われた蜂蜜色の瞳が、高揚感にきらめく。
「――へぇ、“そう”したんだ」
一歩も引かずにこやかに、でも静かに睨み合いが始まる紫苑と私の傍で――
複雑な感情を抱く爽真は、苦々しそうに歯噛みしていた。



