台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


コツン。パカ。と、テンポよく次々ボウルの中に滑り落ちていく卵たち。

もちろん黄身はまんまるのまま。

伏し目がちに作業に向き合う爽真の横顔は、びっくりするほど造形が綺麗で、料理人ドラマでも見ているかのような感覚になる。

危うく一瞬、お砂糖ボイスを忘れかけた。

「すっ……、……すごーいっ!
瑠奈、尊敬しちゃう」

割った卵を手際よくかき混ぜ始めた爽真の横から、顔を覗かせる。


「かっこいいね、爽真くん♡」


料理に集中していた爽真が反射的に私を見て、作った上目遣いに手を止めた。

「……うるさ」

ボソッと悪態をついて、カメラに背を向ける。

背後の戸棚から調味料を探している風に手を動かし始めた。

「ひどーいっ!もう瑠奈、泣いちゃうよ!?」

私はオーバーなくらい唇を尖らせて、ちょっとうざい悪女の演技。

スタッフたちがクッと笑いを堪えている。

「……」


爽真の塩対応ぶりに、巻さんの疑いの目も緩んでいく。


その裏で。


誰にも気づかれないくらいうっすらと、爽真の表情が戸棚のガラス面に反射して映っている。

困ったように眉を寄せて、口をへの字に曲げた顔。

照れが漏れそうになって咄嗟に後ろを向いたことは、誰にも知られることはなかった。