(まずい。このまま主導権を握られ続けたら、色んな意味でよろしくない)
この場と心の平和を取り戻すために、今度は私が立ち上がる。
「さっきの紫苑くんのは、誰かを驚かせる時の“わぁ”、でしょ?」
紫苑の右側に回って、その間に机に置いたスマホの録画開始のアイコンをタップする。
最後に、ぴったり張り付く近さで紫苑の隣に座った。
「今度は瑠奈の番ね?」
きゅるっと再び上目遣い。
一瞬だけスマホカメラを一瞥して、“撮ってるぞ”の圧をかける。
「じゃ、やるから見ててね――……?」
私の、演技力。
善良そうな皮を被った紫苑の目の奥に、興味と期待が滲んでる。
その目の前で私は、自分の頬を両手で包んでとびっきりの笑顔を見せた。
「わぁっ♡」
……ぽかん。
紫苑の笑顔が、そんな音が漏れる顔になる。
「え、と……それは……?」
答えどころか状況も判断がついてなさそうな声色。
“あれ?意外と下手?”そんな心の声が聞こえてきた。
(本気でシチュエーション演技するわけないでしょ?
下手くそなのが“瑠奈”なんだから)



