かろうじて“瑠奈”声だったけど、心臓はバックンバックンいっている。
紫苑の手に握られた小型の手持ちカメラには、素と演技半々で腰が引けてる私の顔が写っている。
「あれ?俺の出題ターンだったのに。
瑠奈ちゃんのそれは、お化けに会った時の“わぁ”かな?」
「間違えちゃったの?」ってとぼけた言い方だけは、爽やか王子のそれ。
しっかり常設カメラに顔を背けながら、紫苑が意地悪そうににやりと笑う。
それから満足そうに立ち上がって、さっきの位置に戻って行った。
「も、もー。紫苑くん。
これはね、表情と声色だけで演技するゲームなんだよ?
身振りは入れちゃだめー♡」
指でバツを作って発する砂糖を溶かした声の裏は、“紫苑このやろー”で溢れてる。
「あ。そうなんだ。初めてやったから知らなかった」
(嘘つけええええ!)
紫苑は上機嫌でローテーブルに肘をついてこっちを見ている。
その手にはカメラ。しっかり録画中だから、わずかな表情の揺れも許されない。



