♡
ペタペタと足音を立てながら、滑り止め付きの鉄製の階段をぐるぐると登る。
“練習”スライダーだから、カメラは一旦下がってもらって、アクションカメラも手放せた。
私の後ろには爽真。当たり前に爽真。
1人で滑って水の中に放り込まれるなんて、怖すぎて無理だもん。
「怖いならやめとけばいいだろ」
「嫌だ!やる!怖いからやらないなんて、プロの世界には通用しないんだから!」
爽真が呆れたように黙る。
そもそも階段を登る前から私の心境を察してただろうに、止めなかったのは多分この性分を知っているからだ。
「撮れ高を他でつくればいいだけだと思うけど」
「無理!表爽真とじゃ何もおいしくならないから」
無視されるし、冷たくされるし。
集団の中でそれならエンタメだけど、2人だけだとただ爽真の感じが悪いだけにしかならないし。
速攻で否定した私に、爽真がムッとした顔をする。
そのくせ何も言わないから、私はぶつぶつスライダーへの悪態をつきながら、どんどん階段を登っていった。



