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7月5日。15:00。
冷房ぶっこわれのオンボロ事務所で、私、こと香月瑠奈はマネージャーの御手洗と睨めっこをしている。
「御手洗っ!どう!?上目遣い!!
キュンとした!?」
「何ガン飛ばしてるんですか、瑠奈さん。
喧嘩売ってんですか」
「ちっが――――う!!」
ドカーンと両手を突き上げて鬱憤を晴らす。
ストレートの黒髪がバサバサと揺れた。
テーブルには、散らばるメイク道具とファッション雑誌。
それからヘアアイロン。
「あざとかわいい女子なんて、無理!私には、無理!
キャラが全然違うもーん」
バン!と机に突っ伏して、荒く足をばたつかせる。
上目遣いが白目になるのは、もううんざりだ。
「プロの女優がそんな泣き言許されると思ってんですか。
あなたプロなんでしょう。ならやりなさい。プロなんだから」
プロプロプロプロ。
連呼されてカッチーン。
そうだった。プロだったらあざとい女子くらい、朝飯前でできないといけない。
「もっかいやるから!見てて!御手洗!」
「単じゅ……いや、その意気です。瑠奈さん」
8月まで、あと少し。
「どう!?この目!」
「何か文句でもあるんですか」
「ちが――う!」
それぞれのエピソード0を経て、
台本通りの夏が、やってくる。



