「俺、演技経験ないですし」
「そこは大丈夫!爽真の性格のまま、設定守ってちょっと脚色すればいいだけ。演技レッスンも一応受けてもらうし」
「恋愛にも興味ないです」
「そこも平気。序盤は恋愛に興味ない、異色の一匹狼の設定だからさー」
「……」
回避できない。
マネージャーも話は終わりと道具を片付け出したし。
出演は決定事項みたいだ。
「相手役は同じ事務所の子だし、気楽でしょ?
白石美玲ちゃん。知ってるよね?」
「はぁ、まあ……」
――といっても、何年か前の養成レッスンで同期だっただけだし。
今では、たまに見かける程度だけど。
気が重いまま、ヤラセを示唆するページを眺める。
紫苑・美玲・俺。
それから、空白の女の四角関係。
そこだけ、キャストの名前がなかった。
「……ここの空欄は……」
「ああ、そこ?まだ決まってないんだって」
スマホでスケジュールを確認しながら、こっちも見ずにそう言われる。
「そこの枠だけ出演者探し難航してるんだって。なんでだろうね?人気番組のメインなんて、おいしい仕事なのに」
スマホをポケットにしまい込んだマネージャーが、せかせかと立ち上がる。
「ごめんね!他の子の現場行かなきゃだから、もう出るね!
アオバケのスケジュールは後でメールするから」
バタンと荒っぽくドアが閉まる音がした後、空調の音が虚しく残る。



