紫苑が、掬ったままの私の髪をそっと指で撫でる。
ここまで来て誤魔化せるわけがないのに、爽真がふっと感情をオフにした。
「なんの話?俺ももう寝るから。
何しに来たのか知らないけど、用が済んだなら行くぞ、紫苑」
わざわざキッチンに立ち寄った爽真が、紫苑の首に腕を回して引っ張っていく。
「おやすみ瑠奈ちゃん。また“明日”、ね?」
爽真に連行されながら、紫苑が緩やかに手を振ってくる。
爽真たちが階段を登る足音が遠ざかって、無音になった部屋には私1人だけになった。
(なにがどうなったら、こんなことになるの……!?)
爽真に心拍数を上げられて、
紫苑に振り回されて。
安息地だった深夜が、危険領域に変わる予感がした。



