怖い、とは思わなかった。
ただ、爽真の知らない熱に触れた気がして、動けなかった。
「さっきから、自覚してやってんの?」
スマホの液晶の光が上向いて、私を真上から見下ろす爽真を照らす。
その目は鋭く細くなって、完全に怒った顔をしている。
「な、なんのこと……」
「だろうな、瑠奈は何もわかってない」
自覚したのかと聞いたくせに、ピシャリと両断。
ソファの座面に立てた爽真の膝が深く沈んで、私の手首を掴む手の力が、もどかしそうに強くなる。
「俺が面白くないって思うことも、嫌だって思うことも。
瑠奈は、何も……」
スマホの光が弱くなって、ふっと消える。
最後に見えた爽真の顔は苦しそうで。
腹立たしいとか悲しいとか、痛いとか切ないとか。
いろんな感情がぐちゃぐちゃに煮詰まっているみたいな顔をしていた。
「ご、めん……。けど、なんの話……」
テキトーに答えちゃいけない気がして、ぎこちなく言葉を押し出す。
夜目が利いてきた頃に見た爽真の顔は、もういつもの淡白な顔になっていた。



