「え?何が?」
「アレの設定は白石との揺るがない純愛だろ。
なのにここ最近無駄に近すぎない?アイツ」
すごく事務的で淡々とした言い方。
そして内容はごもっとも。
「あ――……アレ」
だから私も、気まずく視線を彷徨わす。
“あれは、私を試して遊んでるだけなんだよ”
“シナリオの隙間を掻い潜ってるだけだから、案外ストーリーに害はないんだよ”
そうやって、事実をサラッと言ってしまえばよかったのに。
言い淀んでしまったから、なんかもう言い辛い。
……それに、紫苑には浮き輪事件のやらかしがある。
下手な言い方をしたら、爽真に紫苑に近づくのを反対されるかもしれない。
ポケットの中のスマホを、さりげなく握りしめる。
せっかく、予定外にすでに紫苑一本化計画が上手く転がり始めているのに。
爽真と約束した、世間に受け入れられる悪女になるための道筋を、今は邪魔されたくない。
「アレは多分、紫苑と美玲の純愛をより盛り上げるって狙いがあるから良いんだよ。」
罪悪感でドキドキしながら、爽真反応を窺う。
「紫苑って、撮れ高を作る勘がいいっていうか。
昼間だって、私の演技の意図を汲んで受けてくれた感あったし。必要なことなんだよね」
黙って聞いていた、爽真の眉間の皺が深くなる。



