周りが寝静まった深夜0時。
眠りが浅くて目が覚めた。
少しでも息がしたくて降り立ったリビング。
そこに、香月瑠奈がいた。
「ひゃっ……びっくりしたぁ」
相変わらずの鼻に抜ける高い声。
大袈裟に肩を跳ねさせる不自然で自然なリアクション。
だけどその黒髪は少しの歪みもなくまっすぐで、化粧で塗り固めない分、凛として澄んだ瞳がその印象を強調していた。
まるで別人。
なのに仕草や声は朝のままだから気持ち悪い。
だから、足が勝手に距離を詰める。
目の前に見えているもののうち、どれが本物なのか確かめるように。
香月瑠奈の目の前に迫って、じっとその姿を見下ろす。
なよっとした立ち姿のくせに、伸びた背筋。一歩も引かない態度。
辛うじて保っている笑顔が、緊張に僅かに引き攣っている。
なのに逸れない瞳はやっぱり強くて、別人なんだと思った。
「……誰?お前」
「はっ?」
何段も低くなった香月瑠奈の声。
一瞬ハッとした顔が、すぐに巧い笑顔に変わる。
「えと、……瑠奈だよ?髪型違うからわかりにくかったよねぇ。ごめんね?」
(……コイツ。やっぱり人格作ってんだ)



