けれど、カメラは回る。
大人たちからの無言の圧もある。
――これは、仕事。
気が乗ろうが乗るまいが、応える必要のあるもの。
今の俺が、美玲に落ちる演技をするには。
『爽真っ!綺麗だね!』
藍紺色に白い牡丹を咲かせて、甘くもなんともない声で俺を呼ぶ、瑠奈の姿を心に描く。
思った以上にはっきり姿が浮かぶから、重症だなと苦笑が漏れた。
「ん、……綺麗だ」
――ぽつりと落ちた呟きが、生々しい。
不意打ちを食らった美玲が頬を染めて、ほんの少しの期待を滲ませる。
カットがかかるとすぐに、「今の良かった」と囲むスタッフの声。
……この日、俺は。
美玲に恋をした、ことになった。



