ヒュ――……と、花火が夜空に上がっていく音がする。
直後、夜空にふわっと大きな金色の光の筋が飛び散った。
目を奪われた隙に、ドーンと心臓を打つ重低音。
怯む間も無く、次々と大輪の花が暗い夜空を光らせる。
(……綺麗)
そう思っている間に消えては、また咲いて。
辺りを一瞬明るく照らす閃光を、演技も忘れてぼうっと流し見してしまっている。
(なんで優勝なんかするの?爽真)
膝に置いた手には、無意識に力がこもる。
暗闇でも浮かび上がる白い牡丹が、僅かに歪んだ。
(おかしいでしょ。アオバケ二期の目玉イベントだよ?
紫苑×美玲の見せ場。それが自然な流れじゃん)
(というか、何。なんで見てくるの。なんで触ってくるの。なんで爽真が痛そうなの)
頭の中は悪態だらけ。
苛立っているくせに、なんか泣きそうでもあって。
(痛いのはこっち。なんであんななんでもない顔で――
美玲に触れさせてるの?)
はた、と暴走していた思考に急ブレーキがかかる。
花火を映す瞳が見開いて、泳いで、またぐずぐずに弱くなる。
あ――――。今、とんでもないことを思ってしまった。
夜の海に打ち上がる、色とりどりの打ち上げ花火。
その光が私を照らして、藍紺色の浴衣に咲く白い牡丹を鮮やかな色に染め上げた。
(カメラ。回ってるんだから、ちゃんとしないと)
なのに、上手く表情が作れない。
虚なまま、花火を見るので精一杯。
(ああ。わたし、私)
この花火を、本当は爽真と見たかった。



