台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


――――
――……

小さいレジャーシートに、紫苑と並んで膝を立てて座る。

すぐそばに涼しい潮騒と、花火を待つ浮き足だった人の声。

すごく遠くに、まだぼんやりと仮設テラスは見えている。

正面から私たちを捉えるカメラが回っているからか、紫苑はぼんやりとした顔でまだ静かな空を見上げている。


すぐそこに、だらんと空いた紫苑の手。


“瑠奈”らしく、その腕にしがみついてみようか。

……なんて思ったのに、まだ熱が残る指先がブレーキをかけて、ギュッと自分の膝を抱えさせた。


「もうすぐだね、花火。楽しみだねっ♡」

代わりにちょっとだけ体を傾けて、紫苑の間近で耳打ちする。

紫苑の目が一瞬私の手に落ちて、それからすぐににっこりと綺麗に笑いかけた。

「うん、……そうだね」


一度落ち始めた夕日は、あっという間に身を潜めようとする。
花火大会の開始予定時間の19時を超える頃には、あたりはほとんど暗くなっていた。


「――これより、花火大会を開始します」


音割れした町内アナウンスが、広い砂浜に響き渡る。

仮設テラスの骨格はもう見えない。
照明がぼんやり浮かんでいるから、そこに爽真たちがいるのだとわかるだけ。

見えるのは自分の手元と、すぐ隣にいる紫苑の綺麗な横顔だけ。