台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


握るでもなく、撫でるでもなく、ただ指先を触れさせただけ。

思わず見てしまった爽真の顔は、無感情な横顔だったのに――……

本当に一瞬、切なそうな目が、ふっと私のことを見た。

胸が痛い。痛くて苦しい。


なんで?

私はただ、台本通りに恋をしてるだけなのに。


爽真が触れた指先が、ずっと熱くてジクジクと痛い。

後ろ髪を引かれても、もう振り返ることはできない。

なぜならカメラは回っているし、
“瑠奈”は紫苑に夢中でいなくちゃいけないから。


――紫苑と距離を詰めながら歩く後ろ姿に、不意に美玲が振り返る。

カメラが捉えた物憂げな目に映すのは、
紫苑の後ろ姿か、――爽真を見ていた、私か。


「……どうかした?」

なんでもない顔をした爽真が、何事も無かったかのように前を向いたまま問いかける。

美玲は小さく微笑んで、腕に添えた手にほんの少しだけ力を込める。

今隣にいるのは私だ、と自分に言い聞かせるように。


「……ううん、なんでもない」